出光興産 CDO三枝幸夫氏が見据える、ビジネス変革を担う「CDOの役割」

日立グローバルライフソリューションズ CDOの田岡敬氏が第一線で活躍するビジネスパーソンから、その人がキャリアを切り開いてきた背景やイノベーションを生み出してきた思考法を探る連載企画。第24回は、出光興産で執行役員デジタル変革室長を務める三枝幸夫氏が登場します。 三枝氏は、ブリヂストンに約35年間勤め、2017年からはCDO・デジタルソリューション本部長としてビジネスモデル変革やDX推進を行いました。その後、2020年1月に出光興産へ転職し、デジタル変革室長として再びDX推進を手掛けています。三枝氏はブリヂストンでどのようにしてビジネスモデル変革やDXを進めたのか。また、出光興産では何を成し遂げようとしているのか、その考えを聞きました(前編は、こちら)。

変革を迫られる石油会社で、新たなチャレンジがしたかった


田岡 ブリヂストンできちんと結果を出していたのに、出光興産に転職されたのには、どんな理由があったのですか。


三枝 ひとつは、デジタルの領域でいろいろな方とお話しすると、わりと転職経験のある人たちが多いので、その懐の深さがなんとなく、かっこいいなと思ったことです。私も「いついつまでブリヂストンのCDOをやっていて、今はここで…」と言ってみたいなと(笑)。   

三枝 幸夫 出光興産 執行役員 CDO デジタル変革室長

1985年ブリヂストン入社。生産システムの開発、主に制御システムや生産管理システム開発、工場オペレーション等に従事。2013年に工場設計本部長となり、生産拠点のグローバル展開を推進。2016年に執行役員となり、マーケットドリブン型のスマート工場へと工場のインテリジェント化などを推進後、2017年よりCDO・デジタルソリューション本部長となり、全社のビジネスモデル変革とデジタル・トランスフォーメーションを推進。2020年1月より出光興産執行役員デジタル変革室長。


田岡 まあまあミーハーな気持ちで(笑)。


三枝 はい、もうひとつは、ブリヂストンのソリューションの方向性が見え、それをグローバルで拡大していくという段階に入ったところで、私としても、もう少し新しいことに挑戦したいなと思っていたんです。そんなときに、ちょうど出光興産から声をかけてもらいました。


出光はちょうど昭和シェルと経営統合して規模や事業領域を拡大し、これから社会が脱炭素に向けて動きを加速していくなかで、石油ビジネスとは異なる事業を新たに展開していかなければならないというタイミングでした。このご時世になぜ石油会社に行くのかと思われるかもしれませんが、非常にチャレンジングな変革をリードできる環境が変革を生業とする身としてはありがたく、やりがいがあるなと思っています。


田岡 このリモートワーク環境下、転職していきなりCDOに着任され、社内のスタッフとの関係構築が大変ではないですか。


三枝 私の場合はラッキーで、昭和シェルとの経営統合から間もなかったので、常に社内の会話が「初めまして、どちらのご出身ですか」から始まることも多い状況でした。社内のネットワークを再構築しているタイミングでしたし、オンライン上では役員が集まるミーティングも高頻度で開催されていたので、比較的入りやすかったですね。


デジタル変革は、3つのコンセプトで着手


田岡出光では、どのようなことに取り組まれているのですか。  




田岡 敬 日立グローバルライフソリューションズ 執行役員 CDO(Chief Digital Officer) 兼 Chief Lumanda Business Officer

リクルート、ポケモン 法務部長(Pokemon USA, Inc. SVP)、マッキンゼー、ナチュラルローソン 執行役員、IMJ 常務執行役員、JIMOS 代表取締役社長、ニトリホールディングス 上席執行役員、エトヴォス 取締役 COOを経て、2020年10月1日 日立グローバルライフソリューションズ 執行役員 CDO 兼 Chief Lumada Business Officerに就任。


三枝 まずは、デジタル変革のコンセプトを3つつくりました。ひとつ目は「Digital for Idemitsu」で、従業員が取り組んでいるオペレーション業務を、デジタルで効率を上げながら全体最適にしていくことです。2つ目は「Digital for Customer」で、業務を効率化した分の余力をお客さまに向け、より高い価値で提供するためにいろいろな活動をしていくこと。そして、お客さまの困っていることをすべて出光で解決できるわけではないので、企業間連携を進めながらシナジーを生むエコシステムをつくろうというのが、3つ目の「Digital for Ecosystem」です。


デジタルと言うと、IoTやAIのような魔法の箱を持ってきてあっという間に人も多いかと思いますが、そもそもデジタル変革は、全員で仕事のやり方を変え、ビジネスモデルを変革していく活動なのだという啓蒙も同時に行っていますね。



田岡 具体的に着手していることはありますか。


三枝 最初に取り組んだのは、石油プラントのメンテナンスです。石油プラントは非常に多くのタンクと配管でできているような施設なのですが、国内のプラントの多くが老朽化と同時に、操業に携わるベテラン技術者たちが定年年齢に差し掛かり、現場からベテランがどんどん減ってきています。そのため、中堅の技術者たちに大きな負担がかかっているんです。


一方、経営的な目線で見れば、石油の需要が低下しているにもかかわらず、古くなったプラントのメンテナンスコストが上昇しています。このように、コストを上げたくないうえに技術者も不足しているという状況には、デジタルテクノロジーが非常にマッチすると考えています。ベテラン技術者のノウハウをデジタルに置換して、技術者がより効率よく働ける仕組みをつくっているところです。


田岡 それはドローンで、映像から診断したりするようなイメージでしょうか。


三枝 そうですね。ただ、現場で困っているのはそれだけではありません。石油プラントは危険物を扱っているので、定期的に法定点検をする必要があります。そのために書類をしっかりとつくって官庁に提出しなければならないのですが、こうした事務仕事に大きな手間がかかっています。なので、それらをすべてデジタル化し、余った時間を点検やよりよい工場プラントづくりに回せるようにしています。


デジタル化といっても、新しい技術を入れるだけではありません。専用のアプリやデータベースをきちんとつくって自分たちで運用することです。ただ、それに加え、プラントの技術者をお客さまに見立ててデザインシンキングやアジャイルで困りごとを抽出し、それをテクノロジーで解決することによって、「DXが良いものだ」という認識を現場に持ってもらおうと考えています。


田岡 なるほど。この事例は「Digital for Idemitsu」かと思いますが、ほかに「Digital for Customer」で動き出されていることはありますか。


三枝 お客さま向けでは、サービスステーション(ガソリンスタンド)ですね。ガソリン車は2030年代には販売されなくなると言われており、そうなればサービスステーションは不要になっていきます。そこで、サービスステーションを給油だけではなく、新たな価値を提供できる場所にするため、交通アクセスのいい拠点では超小型の電気自動車のシェアリングサービスの拠点とする案など、いくつか実証実験を行っています。


参考:出光、超小型EVに参入 価格は150万円以下


田岡 「Digital for Ecosystem」では、どういった企業とどのような取り組みをしたいと考えているのですか。


三枝 例えば、ベンチャーキャピタルであるスクラムベンチャーズさんのスマートシティー実証プロジェクト「Smart City X」にパートナー参画しています。異業種から様々なパートナー企業が集まり、スタートアップ企業と連携して、生活者目線で豊かで暮らしやすい街づくりを目指しています。


スマートシティといっても街全体をつくるわけではなく、地域の人たちにとってより豊かな暮らしをするために必要な新しいサービスを開発・実証して、さまざまな地域で活用して行くことを目指しています。Android型と言っていますが、地域で抱える多様な課題に対して、必要な解決策をモジュールで提供できたら素晴らしことだと考えています。


田岡 おもしろそうです。


田岡氏と宮田氏による対談:シリコンバレーのベンチャキャピタリスト 宮田拓弥(スクラムベンチャーズ)が、日本企業に見出している価値と可能性


三枝 そうですね。ただ、スマートシティはなかなかビジネスになりにくいと言われているなかで、どのようにビジネスにしていくかが我われとしての大きな課題になると思います。


プレスリリースはこちらよりご覧いただけます。

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